クイズ番組を見てると、次々と正解を出す回答者の頭の中ってどうなってるんだろう?って気になることありますよね。
今回は、そんなクイズプレーヤの脳内をのぞけてしまうような作品、小川哲さんの「君のクイズ」をご紹介します。
今までにない新鮮な読書体験ができる本でした!
本の感想や、なぜ面白いのかについての考察も書いています。
物語に出てくるキーワード「ママ.クリーニング小野寺よ」についても調べてみましたので、よかったら読んでみてくださいね。
「君のクイズ(小川哲さん)」の簡単なあらすじ
「君のクイズ」のあらすじについて簡単にご紹介します。
生放送の早押しクイズ番組『Q-1グランプリ』に出場した主人公のクイズプレーヤー、三島玲央。決勝戦で、対戦相手は本庄絆はまだ問題が一文字も読まれないうちにボタンを推し、正解を叩き出し優勝する。本庄はなぜ正解を出すことができたのか?やらせなのか?謎が生まれる。疑問に思った三島は、真相を解き明かそうと決勝戦を1問ずつ振り返ることにする。やがて見えてきた答えとは?
「君のクイズ」の感想・なぜ面白いのかについて考察!(ネタバレ含む)
「君のクイズ」の感想は新しい感覚の読書体験ができる面白い本でした。
クイズプレーヤーの思考が体感できることに加え「なぜ対戦相手は問題を聞かずに正解を出せたのか」という大きな謎がテーマになっているためです。
私はクイズが小説となっている形の本は初めて読んだのですが、新鮮な感覚がありました。
面白くて後半、一気読みでしたよ〜!!
私はこの本がなぜ面白いのか考察してみました。
①クイズプレーヤーの思考を追体験できるから面白い
この本が面白いのは読書体験を通して、クイズプレーヤーの頭の中をのぞけるからです。
なかなか普段、クイズプレーヤーの思考を知る機会ってないですよね。この本では、リアルにそれが描かれています。
正解を導き出すための思考法や、クイズは知識だけでは勝てない戦い方が色々あるのだと知ることができました。
問い読みのアナウンサーの息の吸い方と口の動きで次の文字を当てるエピソードは、早押しクイズは競技であるし、プレーヤーはもはやアスリートだなと脱帽しました!
また、この本を通して、クイズ自体が生き物みたいで面白いという事実も知ることができました。
例えば、本書では日本一低い山を答えるクイズを紹介していました。
数年前まで日本一低かった大阪の天保山が、震災の地盤沈下の影響で仙台の日和山の方が低くなり、日本一でなくなった事実があるそうです。
こうした変化に応じて答えていくのがクイズなんですね〜。
クイズは世界のすべてを対象としている。世界が変わり続ける以上、クイズも変わり続けるのだ。
君のクイズ/小川哲 P72
変化し続けるクイズの世界に挑む、挑戦者の姿がありありと浮かび物語の面白さを掻き立てていました。
②本全体が謎解きになっている仕組みが面白い
「君のクイズ」の醍醐味は、なんといっても「なぜ対戦相手の本庄絆は問題を聞かずに正答できたのか」という謎が一貫してあるところです。
謎を解明するため、主人公の三島を通したクイズプレーヤーの思考をたどる構成はユニークで面白かったです!
主人公の三島はなぜ本庄が勝てたのか思考をめぐらせます。
徐々に対戦相手の本庄のことからクイズ番組のプロデューサーのことまで、いろんな推理が出てきました。
そして、分かったのは、本庄はプロデュサーの問題の出し方を読んでいたと言う事実。
そして、本庄はさらにその先の展開まで読んで行動していたと言う驚きの展開が待っています。
つまりクイズの先まで読んでいたのです。ここで一気に視野が広がる感覚が面白かったです。
謎が解明されるミステリー小説ならではの面白さがありました。
③人生がクイズに思えてくるから面白い
「君のクイズ」読んでいると、三島のクイズに向き合う姿勢に共感し、人生がクイズに思えてきます。
学生時代、羞恥心で押し負けてしまっている主人公に対し、当時の部活の部長が言ったセリフに私は共感しました。
「(引用)・・・『恥ずかしい』という感情はクイズに勝つために余計だ。そんな感情は捨てた方がいい。笑われたって、後ろ指ささされたっていいじゃないか。勝てば名前が残る」
君のクイズ/小川哲 P89
これをきっかけに、恥ずかしさを克服していく主人公の様子からは、クイズ競技を通した生き方の姿勢も教えてくれます。
また、主人公の三島がクイズの選択と人生の選択を比較する話も印象に残りました。
僕たちはしばしば後悔する。自分の選択が間違いだったのではないかと不安になる。あのとき、こっちの答えを選んでいれば、もしかしたらー僕たちは選ぶことのなかった答えのことを考える。
君のクイズ/小川哲 P145
人生の選択って後悔しちゃうことありますよね〜私は共感しました。
そして、クイズを通して主人公が自分を肯定する言葉。
クイズが僕を肯定してくれていた。君は大事なものを失ったかもしれない。でも、何かを失うことで、別の何かを得ることもある。君は正解なんだークイズが、そう言ってくれているみたいだった。
君のクイズ/小川哲 P144
読み進めていくうちに、あれ?人生がクイズに見えてくる?そんな面白さがありました。
そして、主人公がクイズを通し、自分を好きになっていく姿も良かったです。
読み終わった後に改めてタイトルを見ると「君のクイズ」になっている点も、読者に問いかけられている感じがして、シンプルだけれど、深いタイトルだなと思いました。
全体を通し、いろんな面白さがある新しい感覚がする本でした。
「ママ.クリーニング小野寺よ」について調べてみた!
決勝戦の問題の答えとなった「ママ.クリーニング小野寺よ」って何?って思った方、多かったのではないでしょうか?
本庄が、問題を聞かずに答えた正解の店名です。
お店のCMソングが特徴的だそうなのですが、とても不思議な店名なので、私は最初、小説用に作ったクイズかと思いました。
なので、本当に実在するのか調べみたところ・・・・実際にありました〜!!
山形を中心に、宮城、秋田、新潟の四県で300店舗、展開されるクリーング店だそうです。
昔、お店の外交員に向かって、小さな女の子が元気に呼ぶ姿「ママ!クリーニング小野寺よ!」からとったお店のネーミングだそうで、山形では有名なんですね〜。
なぜ、この問題が出題されたのかの謎の解明もまた面白かったです。
「ママ!クリーニング小野寺よ!」は山形に実在することがわかりました!
おわりに
「君のクイズ」(小川哲)の感想と考察について書いてみました。
新鮮な読書体験ができた本でした〜。私は、読んで良かったです。
また、「ママクリーニング小野寺よ」についても調べ、実在することがわかりました〜。
「君のクイズ」読んだ後は全てがクイズに思えてくるような面白い本でした。